
小説『華麗なる一族』(著:山崎豊子)のモデルとされているのは、実在した関西財界・銀行界・財閥系企業の人物や組織です。フィクションとして描かれていますが、明らかに現実を反映した描写が多く、モデルとされる対象は以下の通りと推測されています。
【1】モデルとされる主な人物・組織
● 主人公・万俵大介(阪神銀行頭取)のモデル
- 小林中(こばやし あたる)氏:元・日本興業銀行総裁
- 銀行頭取から経済同友会代表幹事にも就任
- 政財界に強い影響力を持ち、「関西の実力者」と称された
- 鴻池家(こうのいけけ)・住友家も部分的な要素として参考にされていると言われます。
● 阪神銀行のモデル
- 住友銀行(現・三井住友銀行)
- 大阪を拠点とし、財閥色が強い銀行だったことから、作品の「阪神銀行」との類似が指摘されています。
● 銀行業界・財界の描写
- 1960年代〜70年代の金融業界の合併再編劇
- 実際に住友・三和・第一勧銀などの統合話があった時代背景が反映されている。
● 鉄鋼業界の描写
- 劇中の「万俵家」が経営する「万俵コンツェルン」は、鉄鋼・不動産・百貨店などを擁しており、これは住友・三井・鴻池などの財閥コンツェルンの多角経営を彷彿とさせます。
【2】時代背景と現実の重なり
- 高度経済成長期の日本(1960年代〜70年代)
- 財閥系企業の影響力が絶大
- 金融統制と政官財の癒着が深かった
- 銀行と企業グループが結びつく「企業集団支配構造」があった
→ こうした時代の空気が、作品にリアルな説得力を与えています。
【3】山崎豊子の取材スタイル
山崎豊子は、長期間にわたる徹底した取材主義で知られ、小説とはいえ「現実を写し取る」ことを重視していました。そのため、関西財界・銀行関係者などから「モデルにされた」との声もあった一方で、名指しされないよう配慮された部分もあります。
【まとめ】
小説の登場要素 | モデルとされる実在 |
万俵大介 | 小林中(元興銀総裁)など |
阪神銀行 | 住友銀行(現・SMBC) |
万俵コンツェルン | 鴻池・住友・三井系企業 |
政財界との癒着 | 高度成長期の現実の構造 |
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